智者が必ずしも現世で受け入れられるとは限らないが、後世になって広く世に知られるというコトは結構ある。
ともあれ、世の中の非情さを説いた本人が、その非情さによって亡くなったという「あとがき」には、世の中の無情さを感じるけれども、それも含めて人生というのは、中々、一筋縄ではいかないモノ。
現代に合わせたので、超訳したというコトだが、原文の読み下し文も付いている。
それにしても、今の日本には耳の痛い言葉が色々と並んでいる。
例えば、「法の適用は相手によって変えてはならない」など、実に手厳しい。
加えて、「ひたいに汗する労働を軽視するな」というコトで、「国が乱れてくると労を軽視し、楽して稼ごうとする人がふえる」などというのも然りだろう。
「国を治めるうえで、もっとも心配なのは、国家の土台を齧る鼠」と、汚職で肥え太る官吏や、結託している商人を警戒している。
何を気に入るかは、各人の好みもあるだろうが、韓非子という人は単なる朴念仁ではナク、世の中の仕組みに対してかなり冷静な判断をしていた人だというコトが、実に良く判る一冊。