
この本は、グラフを多用しているので、視覚的にも問題点がハッキリ判りやすいのだが、何と言っても驚いたのが、「子どもの貧困対策」として、政府が所得再配分をすると、OECD各国の中で、唯一、日本だけが所得再配分後の貧困率が高いのだという。
子どものいる世帯はほとんどが現役世代のため、税金や社会保険料などの負担が最も重く、社会保険料のどの所得層でも基本的に定率・定額なコトが、所得に対する負担割合を低所得層ほど高くしてしまっているのだという。
要するに、日本の政策は誤っているのだが、それというのも、国会議員も世襲、地方議員も世襲、官僚も世襲したり、閨閥があるタメに普通の人々は出世し難くなっているコトや、地方公務員もコネだらけなので、貧しい人々の声が政治に生かされ難いからだと思われる。
しかも、選挙に行かない人々の理由の多くは「自分一人が行っても、行かなくても世の中は変わらない」という意見だったりするのだが、大都市で投票率が四割台の大阪市では、市議の四人に一人が世襲なのだが、特定の組織・団体に所属する人達だけが投票に行き、浮動票がほとんど存在しないから、特定の組織や団体、講演会をがっちり押さえれば、当選しやすくなるので、世襲がしやすくなっている。
それゆえ、市議は自分の支持者への利益誘導を優先して、全市的な視野に立っての施策など二の次になってしまうのだという。
つまり、ある意味、普通の人々に広がり続ける貧困の種を蒔いたのは、もしかしたら社会に対して無関心な我々の行動に最大の問題があるのかもしれないと内反させられる一冊である。