死にたいからと、殺人事件を起こす人が増えてきた現代ではありますが、死刑よりも怖いのは、何時死刑になるかが判らないコトだということ。そんなコトは、普通の生活をしていてはわかりませんが、小説を読めばある程度は理解するコトが出来ます。
宣告 (上巻)
拘置所の現実を淡々と書いた小説を読むコトが、一番の犯罪抑止力になるのでは、とか思いつつもこの厚い小説を読む人は、そんなにいないだろうと思ったりもするのです。
作者の加賀乙彦さんは、精神科の小木貞孝医師であり、東京拘置所に勤務した経験を基に書いた小説なのですが、数十年前からの大ファンにも関わらず、二十年近く前に買ったままの文庫本を最近やっと読みました。
加賀さんの小説は読みさえすれば素晴らしいとは判っているのですが、読むにはそれなりの体力も必要だし、読んでしまうのがモッタイナイ様な気がしてしまうのです。
昭和という時代を、正確に描写している作品です。タダ、現在だったら、この主人公が死刑と断罪されたかどうか‥‥
最近の裁判は、死刑を回避している傾向にありますから‥‥ちなみに、ワタシは死刑制度は必要なのかもしれないと、この作品を読んで強く思いました。著者の望むコトとは逆なのかもしれませんが‥‥「人を殺した人間を殺すというのでは、二重の殺人があるばかり」かもしれないし、「人を殺すことが悪だというならば、たとえ国家によって合法化された死刑であろうとも、殺人を行うということにおいて同じ罪を犯さねばならぬ。」という現在の死刑制度の問題点を鋭く衝かれようとも、多くの殺人者の過去に虐待の痛ましい過去があるからだとしても、やはり無実の人が殺されてしまったという結果があるならば、やむを得ないのではないかなと思いました。
まぁ、読んだ人によって感想は違うのだと思いますが、少なくともワタシはこの本を読んで、そんな気がしました。ギリギリに追い込まれたからこその、反省もあれば魂の救済もあるのだとは思いました。ただ、冤罪もあるので、その辺が難しいトコではありますが‥‥その話は、明日。