
この三部作は「永遠の都」の続編なのですが、終戦後の日本の首都を丁寧に描いているので、当時の空気がとても良く理解出来ます。
軍国主義と、全共闘の若者の目指すトコは一緒なのに、ソレに対する行動の稚拙さが類似しているという批評はとても辛辣で、でも、かなりの真実が含まれている。
弱者のタメに身を粉にして働く人も居れば、ソレを政治的に利用する人も存在するし、私怨を公憤にすり替えて晴らそうとする人も存在する。
そういう意味でも、教科書に書かれてない本物の戦後史としても、第一級の小説だと思う。思えば、三十年ホド前に、「フランドルの冬」を読んでから、ずっと大好きな小説家だったが、全ての小説の集大成がこの大長編小説にあるのだと思うし、知らなかった昭和史を知る意味では、とても価値のある小説なのだ。
タダ、それらは全て恋愛小説を横糸に織り成されるので難なく読め、今やこうした小説を書けるだけの題材を持った小説家というのは、既に存在しなくなって来ているのではないか。そういう意味でも、日本の小説というのは、衰退して来ているのかもしれないとも思う。