それにしても、どうしてこんなに「格差社会」になってしまったのだろうかというコトを、労働者の賃金がダンピングされ続けているからだと明確にした一冊。
労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)
何となく、そうなんだろうなというコトが、すっきり整理して書かれているので、とても理解しやすい。
簡単に言えば、正社員をなるべく非正規雇用にする。それに伴って、賃金を安くして働かせ、非正規社員を使用するコトで、より正社員を圧迫してリストラをしたりして、ドンドン非正規雇用を進める。
そして、残った正社員にはサービス残業をさせたり、ノルマを課して時間外に働かずにはいられなくし、ノルマを達成出来なければ、ボーナスをカットするなどして、結果的に正社員と言っても、給料を時間給にすれば、通常より安くさせてしまうワケだ。
加えて、タクシーやトラック業界の規制緩和によって、台数が増え、乗務員が増えたとしても、需要が増加するワケではナイ。ゆえに、競争により低賃金化がもたらされるというワケだ。
就業規則を改正して、正社員であるコトのハードルを上げ、パートに格下げし、要望の多い従業員を解雇するコトも横行しているそうだ。
「承諾しなければ解雇」という武器を手に、労働条件を不利益に変更させる会社側に対して、裁判所もどちらかというと、企業寄りの判決を出すので、ダンピングは進められるのだという。
要するに、コスト・カット至上主義に走る会社に、労働者はホトンドなすすべもナク、賃金カットされ続けて、今の「格差社会」が出来あがったというコトらしい。
派遣料金は、「人件費」ではナク、「物件費」として管理され、労働が商品化された結果、下手すると必死で働いても、生活保護よりも少ない手取りしかナイ生活を押しつけられて来ているのだそうだ。
しかし、この本にも書かれているが、どんなに賃金をカット出来たとしても、その結果として貧困層が拡大して、その層に対して「福祉としての税金」が投入されるのであれば、結局、社会にとってはマイナスになってしまう場合も多い。
やはり、「金は天下の回りもの」なのだから、より多くの人々に、少しづつで良いから余剰資金を手にさせて、世の中の景気のかさ上げをするという方が、社会として健全なのだと思う。
労働力の値崩れで、全ての国民が疲弊してしまわないタメにも。