栄光なき凱旋 上
自分たちの祖国はアメリカだと思っていても、敵として扱われる二世達のもがく姿に心が打たれる。
アメリカ人であることを証明するために、あるいは自分達を捨てた日本に対する憎しみが、兵士として参戦するしかナイ状況に追い込まれる物語なのですが‥‥
その中で、戦争に対しての象徴的な言葉がこちら。
国を守るために立ち上がれ。勇ましく呼びかける連中が、実際に戦場へ出ることなんかありっこない。これこそが、戦争の真実なのでしょう。
全てが、国の利権絡みの発想で始まり、結局、力が強いものが勝つ。しかも、戦争の最前線に立つのは、マイノリティの人々。彼等は、自分達が社会に虐げられても、その社会で生き残るタメには、どうしても自分達の血を前線で流す必要がある。
移民は棄民だったのかもしれないと思いつつも、自分達の産まれた国と自分達の祖先の国との対立に巻き込まれ、その中でしか生きられない人々の苦悩を描ききった作品です。
「国のタメ」という言葉が、声高に叫ばれる時ほど、騙されないように我々は気を付けなければならないと改めて思わせてくれる小説でした。