2009年11月28日

民衆のタメの国か、国のタメの民衆か

お気に入りの作家の一人である真保裕一さんの作品と知って、読み出したのはアメリカにおける日系人が、第二次世界大戦の時にどう生きたかという長編小説。

栄光なき凱旋 上栄光なき凱旋 上


自分たちの祖国はアメリカだと思っていても、敵として扱われる二世達のもがく姿に心が打たれる。

アメリカ人であることを証明するために、あるいは自分達を捨てた日本に対する憎しみが、兵士として参戦するしかナイ状況に追い込まれる物語なのですが‥‥

その中で、戦争に対しての象徴的な言葉がこちら。
国を守るために立ち上がれ。勇ましく呼びかける連中が、実際に戦場へ出ることなんかありっこない。
これこそが、戦争の真実なのでしょう。

全てが、国の利権絡みの発想で始まり、結局、力が強いものが勝つ。しかも、戦争の最前線に立つのは、マイノリティの人々。彼等は、自分達が社会に虐げられても、その社会で生き残るタメには、どうしても自分達の血を前線で流す必要がある。

移民は棄民だったのかもしれないと思いつつも、自分達の産まれた国と自分達の祖先の国との対立に巻き込まれ、その中でしか生きられない人々の苦悩を描ききった作品です。

「国のタメ」という言葉が、声高に叫ばれる時ほど、騙されないように我々は気を付けなければならないと改めて思わせてくれる小説でした。
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この記事へのコメント
以前、私のブログで紹介した三遊亭楽太郎さんの一節を思いだしました。

>ぼくらは税金という年貢を納めている。官僚や政治家は禄を
はむ武家の立場。もののふは間違いを起こしたら腹を切った
けど、官僚や政治家は責任をとろうとしない。腹を切らせる
のは国民の投票行動なんです。それを国民が自覚しないと。
Posted by takachan at 2009年12月01日 10:06
takachanさん、武士の時代だってホトンドが自分より身分の低いモノに「詰め腹を切らせて」いたのが現実です。

とにかく、弱い者にしわ寄せが来るのは、太古の昔からの真実で。

せめて、楽太郎さんがおっしゃる様に、投票しないと何時までも下々が腹を切るコトになりかねません。
Posted by koyuri at 2009年12月01日 19:54
 
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