
イギリスという国は、「ゆりかごから墓場まで」という高福祉の国だと教わった古い時代の人間には、サッチャー政権から始まった「小さな政府」という掛け声のその先に出現したイギリス社会の変貌は、ある程度は知ってはいたものの、ココまでアメリカみたいな格差社会になっていたのかと、驚きを禁じえません。
人生の幸運から得られた報酬を、自らの才能と勘違いして他人を省みるコトが出来ないスーパーリッチ層へのインタビューから、人間というものはあまりイマジネーションというモノは無くて、どんなに自分が恵まれているかという客観的な自分に対する評価が出来ず、自分よりも弱者に対する想像力が欠落しているものだと感じました。
要するに、人間というのは、誰しも自分に都合がイイ様に世の中を変形して見ているのでしょう。
累進課税を緩やかにしたイギリスで、何が起こったかというと、今の日本とそっくりな社会です。
多くの富を手にした者達は合法的であれ、非合法であれ税を逃れたりして、真面目に支払うべき税金は、一般人の懐から出すので、ますます格差は増大してしまうという側面もあるみたいで。
累進課税を緩和する理由は、「そうしなければ、金持ちは他国に行ってしまうから」というグローバルに類似の話なのですが、実際に海外に行けるだけの才能のある人など、そんなに存在しないと語られてます。
この本の取材の時には、リーマン・ショック前だったりしたので、その後その人々は不変の人も居れば、奈落の底に落ちた人も居るのかもしれません。
しかし、単純作業とはいえ無くてはならない仕事をする人々に、ワーキング・プアを強いて、その上前を少数で山分けする様な社会が続くはずもありません。
日本の著書に少ない、建設的な提言も書かれています。
●税金を払うことを誇りとし、租税回避を恥とする文化を構築すべき
●高額報酬のガイドラインを設定する
●税金の均等な資産に応じた税負担を
●非定住者の税逃れを許さない
●相続税や累進課税を厳守する
●全員に税の透明性と安心して暮らせる収入の確保を
かなり抜粋して簡略化してますが、これは今の日本でも当然為すべきコトでしょう。
税金を節約したお金で、より自分に楽な税制へと政治的誘導をする様な勢力とは、政治は決別すべきなのだと改めて思いました。