臨時国会に提出された「社会保障制度改革プログラム法案」は、あくまで「社会保障制度改革の全体像やスケジュールを決めるもの」だが、「個人の自助努力を喚起する仕組みを導入」をスローガンに掲げ、介護・医療・年金などの分野で、これまでの「互助」や「扶養」からの大転換を図っているという。
とはいえ、'07年12月、愛知県に住む当時91歳の男性(以下A氏)が、JR東海道線の共和駅で線路内に入り、快速列車にはねられて死亡した。
JR東海はA氏の遺族に対し、振替輸送などに伴う損害賠償を求めたところ、今年8月、名古屋地裁は720万円の賠償金を全額認めたのである。
A氏には'00年より認知症の症状が出始め、A氏と同居する当時85歳の妻(以下B子さん)と、彼の長男の妻(以下C子さん)が介護に当たっていた。
事故当日の午後4時半すぎ、C子さんは自宅玄関先でA氏が排尿した段ボール箱を片付けていた。A氏は普段からトイレの場所が認識できず、所構わず用を足す状態だったため、あちこちに段ボール箱などを置いて対処していたという。
このとき部屋の中には、A氏とB子さんのみ。ちなみにこのB子さんも要介護1の認定を受けており、老老介護は限界があるため、「長男の嫁」としてC子さんが横浜の自宅から単身、A氏宅の近所に引っ越し、毎日、B子さんとともにA氏の介護にあたっていた。
だが、時間にしてわずか10分足らず、B子さんがついうとうとした隙に、A氏は家から出てしまう。B子さんとC子さんがA氏の行方を懸命に探すも、約1時間後、A氏は自宅最寄り駅の隣駅で、列車にはねられた。
結果、約2万7000人の足に影響し、JR東海は対応に追われたことから、提訴、直接介護に当たっていた妻・B子さんとC子さんの夫、つまりA氏の長男に賠償責任として出た。
A氏には長男の他に3人の子どもがいるが、彼らに賠償責任はないとされた。直接的にA氏の介護に当たっていた家族のみが、責任を問われたというコトと考え合わせると、何とも残酷な話ではないか。
介護施設は入所待ちだったりする上に、ある程度の金額を出せなければ、それも叶わない。
それでも、自助の精神だけで何とかしろと言われても、どうしようもナイではないか。
消費税を増額しても、そのホトンドをばら撒いて、大企業の懐を潤すだけで、国民は長生きせずに、働けなくなったら、さっさと死ねと言うコトか‥‥