色々な分野で、炙り出されている気もするのだが、何故かというコトを考えていたら、日本に欠如しているのは、哲学なのだというコトに気付かせてくれた本がこちら。
鍼灸という、狭い分野の話とはいえ、問題は全てに通じる。
中国は、中医学を使って世界制覇を目指そうとWHOへの働きかけをしているし、韓国でも韓方という医学を大事にしている。
しかし、日本鍼灸は大学や専門学校の乱立と共に、国家試験に合格すればイイ的な教育をするだけであって、全人的な教育がなされてナイと著者は憤慨している。
そもそも、最近の教育機関は、文系の意義を重視せず、国立大学も理系重視になっている。
しかし、「人としてあるべき姿」みたいな哲学的な部分を失って、「生きるというコトは、金を稼ぐコトが一番大事」的な発想になってしまえば、物質的に潤ったとしても、精神的に貧しい。
おそらく、そうした背景があってコソの、日本は世界に冠たる自殺大国なのかもしれないが‥‥
自国の歴史を認識(声高に叫ぶ人々の声に惑わされずに、何が真実の歴史なのかを見極めるという努力)し、伝統の上に自らの新しいページを刻むという努力を放棄した時に、どんな部門も劣化する。
著者の述べているコトは、鍼灸だけでナク、「今さえ良ければ」と醜悪に未来を考えずに行動する世の中の人々への、痛切な警鐘となっている。
一般の人にとっては、さほど読みたいと思う分野の本ではナイのかもしれないが、幕末の家庭医学書『病家須知』など、我々の健康は誰かにお任せするモノではナクて、自らが律すべきものであるという意識は、昔も今も変わらない。
人間として、生きる姿勢が問題なのだというコトを、改めて認識させてくれた一冊。